AIエージェント導入編|2026年10月25日

AI時代のセキュリティ
完璧には守れない。だから、破られる前提で守る

10月に起きたことを一まとめにして、今日からやることまでを1枚にしました。

10月の数字佐川タイムズGMOPHP3段の守り今日からの基本AIエージェント
1いま、何が起きているか

10月の23日間で、公表された情報漏洩は 198件

198件
10/1〜10/23に公表された事案
約2億件
件数を単純に足した数(試算)
23件
そのうち100万件を超える事案
6月7月8月9月10月 20151932 198件(23日まで)
  • 9月までは、ひと月に十数件〜30件ほど
  • 10月だけ、198件に跳ね上がった
  • 100万件を超える大きな事案だけで23件
  • 名前・住所・電話番号は、もうどこかに出ている前提で考えたほうがいい
「漏れたおそれ」と「重複」を含む数字です。2億人が被害にあった、という意味ではありません。発生した日ではなく、公表された日で数えています。
100万件を超えた23件を見る
順公表日組織件数
110/1・10/23佐川急便最大 約5,323万件
210/15ソースネクスト2,251万9,960件
310/9skyticket約1,464万件
410/22カプコン(全世界の合計)1,177万4,247件
510/15バーガーキング公式アプリ約1,118万件
610/5焼肉きんぐ1,078万8,963件
710/19ユミルリンク(延べ・試算)約900万件
810/8第一興商約872万4,000件
910/13銀のさら・釜寅ほか最大 約650万件
1010/9ブックオフ642万7,735件
1110/2ヤマト運輸(クロネコ代金後払い)約526万件
1210/20ふるさとチョイス445万4,097件
1310/16コミックシーモア最大 約420万件
1410/9バイトル最大 388万5,771件
1510/17リクルート(カーセンサーnetほか)最大 370万9,551件
1610/13アルカディア(自治体の防災メールなど)最大 約313万6,000件
1710/23アンドエスティHD約250万件
1810/8ローソン215万5,345件
1910/16日本経済新聞社約183万件
2010/6ミスターマックス最大 173万5,154人
2110/19阪急阪神百貨店約126万件
2210/8NewsPicks約117万件
2310/5ホワイトエッセンス約105万アカウント
出典:satimo-blog「2026年 国内の情報漏えい・サイバー攻撃一覧」(10/24更新・10/23公表分まで)。約2億件は一覧の198件を単純に足した試算(単位の違い・重複・おそれを含む)。
2佐川急便

荷物を受け取っただけで、対象かもしれない

送り状 氏名・住所・電話 ? ? 依頼主(あなた) 届け先(お客さん)
最大 約5,323万件
上場企業の漏えいとして過去最多(東京商工リサーチの集計)
  • 荷物の配達状況を調べるサービスに、不正アクセス
  • 6月21日〜9月30日に扱った荷物の依頼主と届け先の氏名・住所・電話番号
  • カード情報・パスワードは含まれないと発表
  • 重複を含む数で、実際の人数より多い

物販の人は、2回対象になりうる

商品を送ったときの届け先=お客さんの住所。仕入れや通販で受け取ったときの届け先=あなたの住所。
本物の住所入りの「不在のお知らせ」SMSが来ても、リンクは押さず、公式アプリから確かめる。

3タイムズカー

免許証の画像が漏れて、お見舞いは 3,000円

会員サイト 運転免許証 3,000円 変更できません
  • 外に送られた痕跡があるアカウント情報 662万8,007件(氏名・住所・生年月日・免許の情報など)
  • 免許証などの本人確認書類の画像 146万4,800件にも、外に送られた痕跡
  • その持ち主に 3,000円相当 のお見舞い(10/23発表)
  • 「3,000円では足りない」と、集団訴訟を準備する弁護士も

パスワードは変えられる。顔写真・住所・生年月日は変えられない

漏れた画像は、なりすましの借金や口座開設に使われるおそれがあります。
信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)には、「本人確認書類が漏れた」と登録できる本人申告制度があります。ただし審査の参考にされるだけで、悪用を必ず防げるわけではありません。

4GMOインターネット

自動で売買するサーバーが乗っ取られ、2秒で400万円

自動売買24時間稼働中 借りているサーバー 攻撃者 70を超える証券・FX会社 2秒
  • FXの自動売買に使う仮想サーバー(お名前.com デスクトップクラウド)に不正アクセス。10/21に公表、影響の可能性があるサーバーは 2万6,739件
  • 10/24の発表:顧客情報が外に持ち出され、70を超える証券会社・FX会社などの口座が勝手に操作された可能性
  • ある利用者は2秒ほどで400万円超の損失。その後も取引が続き、損害は600万円を超えた(朝日新聞)
  • GMOは損失(差損・手数料)を補償し、利用者全員に 5,000円 のお見舞い。攻撃者の金銭要求には応じない
  • 10/1に本格施行された法律にもとづき、政府に「能動的サイバー防御」の発動を緊急に要請

今日いちばん伝えたいこと

自動売買のサーバーは、「人がいない間も、自分の代わりに口座を動かせる」仕組みです。乗っ取られたら、犯人も同じことができます。
今日つくるAIエージェントも同じ。任せる範囲が広いほど、鍵を取られたときの被害も広くなります。

ネット上では攻撃者とみられる集団が「数十億円の損害を与えた」と主張しています(読売)。これは攻撃者の言い分で、確かめられた数字ではありません。
5PHPの穴

世界のサイトの約7割を動かす部品に、大きな穴

69.3% PHPを使うサイト あなたのショップ・HP PHP 穴があります
  • PHP=サイトを動かす部品。サーバー側の言語が分かるサイトの 69.3% が使う(W3Techs)
  • ログインなしでサーバーを乗っ取られるおそれのある、深刻な穴が2件(深刻度 9.2/10)
  • 10/21に修正版を公開。ところが公開の前に「穴があること」が外に漏れ、公開が1日早まった
  • 高市首相がXで「大至急のお願い」。IPAも注意を呼びかけ、サイトの一時停止が相次いだ

やることは1つだけ

WordPressなどで自分のショップ・ホームページを持っている人は、作った人かサーバー会社に「PHPの更新は済んでいますか?」と一言聞く。自分で直す必要はありません。Amazonなどのモールの中だけで売っている人は、モール側が対応します。

6なぜ防げないのか

守る側は、全勝しないと負ける

1つで十分
  • 守る側:すべての窓に鍵をかけないといけない
  • 攻める側:開いている窓を1つ見つければいい
  • 大きなシステムは、窓とドアが何万個もある屋敷。全部を把握している人はいない
  • AIは、人間が何十年も見つけられなかった穴を見つけられるようになった。その力が、攻める側にも渡った
  • 本物の住所や注文番号入りの偽メールを、自然な日本語で大量に作れる
7補償の現実

お金は戻っても、漏れた情報は戻らない

3,000円 5,000円 住所 電話 免許証 補償・お見舞い ネットに残り続ける 戻りません

だから、会社の対策を待つだけでは足りない

漏れた情報は、次の詐欺の材料になります。自分の側でできる守りを、自分で持っておくことが大事です。

8考え方を切り替える

完璧には守れない。だから、破られる前提で守る

① 鍵 ② 小分けの金庫 ③ 防犯ベル

これまで:完璧に守る → これから:破られても、売上と信用を失わない

火事を前提に暮らす人も、火の元の確認はやめません。そのうえで消火器と火災報知器を置きます。あきらめるのではなく、備えを3段に分けるということです。

1段目

入られにくくする

パスワードを使い回さない・2段階認証・急かされたら止まる

2段目

入られても、被害を小さくする

バックアップを切り離す・AIに入れるものを線引き

3段目

入られたら、すぐ気づいて動く

入金先・ログインを定期的に見る・引っかかったらすぐ連絡

9今日からやる基本

効くのは、地味な基本

① パスワードを使い回さない

1つ漏れたら、同じパスワードの扉が全部開く。まずはAmazon・Gmail・銀行の3つから。手帳に書くのはやめて、管理アプリに任せる(Googleパスワードマネージャー:無料/1Password:有料・講師が利用)

② 2段階認証(できればパスキー)

Gmailには必ず。Amazonの通知もパスワードの再設定もメールに届く。メールを取られると全部取られる。セラーセントラルは、コードが届く電話番号が今の番号か確かめる

③ 急かされたら、一度止まる

「停止」「至急」「口座変更」「不在のお荷物」は、まず疑う。メールやSMSのリンクは押さず、公式アプリから自分で確かめる。振込先の変更は、いつものチャットや電話で本人に確かめる

④ 大事なデータは、切り離して保存

仕入先リスト・原価表・商品画像・売上の記録。外付けのハードディスクに保存したら、パソコンから抜く

⑤ AIに入れるものを線引き

公開済みの商品ページはOK。仕入先とのやり取りは会社名・金額を消して。お客さんの住所氏名・パスワード・口座・原価の一覧は入れない

⑥ 月に1回、見に行く

セラーセントラルの入金先口座と、Googleアカウントの「最近のログイン」を見る。破られる前提なので、破られていないか見に行く

10AIエージェントを入れる人へ

「見回りの目」は渡しても、「金庫の鍵」は渡さない

あなた(鍵を持つ) AIエージェント 読むだけ・見回り 外から来た指示 「情報を送って」
  • 今日つくるAIエージェントは、パソコンの中を見て、代わりに動いてくれる。GMOの自動売買サーバーと同じく「自分の代わりに動ける」仕組み
  • APIキーやパスワードを、プログラムや指示文に直接書かない(専用の設定ファイルに分ける)
  • 渡す権限は必要な分だけ。まずは「読むだけ」から
  • 送信・削除・支払いは、毎回自分で確認してから
  • 24時間動かすサーバーや自動化ツールにも、2段階認証と更新
  • エージェントが読んだWebページやメールに、悪い指示が仕込まれていることがある。外から来た文章の指示には従わせない
11「漏れたかも」のとき

慌てず、公式から確かめる

こうなったらやること
佐川急便で荷物を送った・受け取った偽の不在通知に注意。確認は公式アプリ・公式サイトから
タイムズカーの会員だった会社からの案内を待つ。必要なら信用情報機関の本人申告制度を検討
GMOの自動売買サーバーを使っていた証券・FX会社の口座に、身に覚えのない取引がないか確かめる
カード情報を入れてしまったカード会社に電話して、カードを止める
パスワードを入れてしまったそのパスワードと、同じものを使っている他のサービスも全部変える
どうしていいか分からない警察の相談窓口 #9110/消費者ホットライン 188
メールやSMSに書かれた連絡先・リンクは使わず、普段使っている公式の窓口から連絡してください。
12今日の2行

守る側は、全勝しないと負ける

だから、破られる前提で、困らない形にしておく

今夜やること

パスワードの使い回しを1つやめる。Gmailに2段階認証を入れる。それだけで、いちばん大きな窓が1つ閉まります。